2007年07月28日

『はだしのゲン』



著 者:中沢 啓治
出版社:汐文社(コミック版)

 ほとんどの人が子どものころに一度は読まれたことがあると思います。戦争の嵐の中、少年ゲンは家族で励ましあって生きていたが、原爆により父と弟が帰らぬ人となり、生き残ったゲンと母は、その後生まれた妹の友子と共に、終戦を迎えた日本で力強く生きていく姿を描いた作品です。

「戦争を知らない世代にぜひ」(尾崎 秀樹)

「劇画の中で被爆者の問題をあつかった作品といえば、白土三平の「消え行く少女」(1958年)や旭丘光志の「ある惑星の悲劇」(1969年)が思い浮かぶ。

 中沢啓治の「はだしのゲン」は「少年ジャンプ」に連載された長篇で、被爆者の一家を軸に戦中・戦後のきびしい生活を描いている。太平洋戦争の末期の広島を舞台に話ははじまる。下駄の絵つけの製造に従っている中岡家は貧しかったが、五人の子どもたちは元気に育っていた。

 しかし、父親が戦争に批判的な言辞をもらしたことから、非国民として疎外され、村八分同様の日々を送る。そして八月六日の原爆をうけ、父親と姉、弟を一度に失う。あとに残ったゲンは、生まれたばかりの赤ん坊をかかえた母とともに逃げのび、さまざまな苦労を経験する。

 予科練へ行っていた長兄の浩二、学童疎開していた次兄の昭ともやがてめぐりあい、亡くなった弟の進次と瓜二つの隆太も加わり、話はいっそうのふくらみをもって展開されるが、この劇画のポイントは、被爆者たちの悲惨な生活の実状をとおして、戦争のむごたらしさをえぐりだしたところにあるといえよう。

 現代の若い世代は、戦争を知らない。うっかりすると西部劇の延長のようなゆがんだ戦争観をもっている。戦争のおそろしさは直接原爆が落ちたり、弾丸が飛んできたりすることだけではなく、戦争にたいする批判や反対はもちろん、積極的に協力しない者はすべて疎外してしまうようなところにある。しかもその傷は戦後にもおよび、三十年を経た現在でも痛々しい傷口をさらしている。

 「はだしのゲン」は、どんな境遇にもくじけることのない、ゲンという少年を主人公にしているだけに、戦中・戦後の悲惨さがより痛切なものとして感じられる。父親の戦時下の言動はやや理想化されすぎていて陰影にとぽしいが、それは、作者の意識的な表現とみるべきだろう。

 私にも、戦中から戦後へかけてのつらい思い出がある。兄が政治犯として処刑されたため、私たち家族は「非国民」として冷たい眼でみられ、戦後、外地から引き揚げてからは、これまたよそ者として疎外された。その日々の体験は三十年を経た現在でも忘れられない。

 それだけにこの「はだしのゲン」については、さまざまな感慨をおぼえる。戦争体験、とくに被爆体験の苦しさを、戦争を知らない世代に語りかけるのは、たいへんむずかしい問題だ。しかし、むずかしいからといってあきらめるわけにはゆかない。むしろくり返し、くり返し、それを訴える必要があるのだ。」(文芸評論家)


【amazon書籍購入ページ】



【amazonDVD購入ページ】



出演:宮崎一成、甲田将樹
監督:真崎守

 中沢啓治原作による傑作戦争コミックの劇場版アニメです。終戦60周年を迎え平和を祈念し、中沢啓治作品をDVD化したものです。原子爆弾の投下により父・姉・弟を失った少年ゲンが、母と共に終戦を迎えた日本で力強く生きていく姿を描いた作品です。

posted by e-先生 at 21:01| Comment(0) | TrackBack(1) | 反原発・環境学習 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック

はだしのゲン
Excerpt: はだしのゲン『はだしのゲン』は、中沢啓治による、自身の原子爆弾|原爆の被爆体験を元にした漫画。同タイトルで実写映画やアニメ映画化もされている。2007年には初めてテ..
Weblog: まおの記録
Tracked: 2007-08-07 05:15
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。